「声」へのこだわり

「声」でなにかを伝えることの大切さを意識させてくれたのは小学校時代の先生でした。校内放送で朗読をしたわたしの肩をポンと叩いて「こういうのを仕事にするといいよ」と言ってくれたんです。あれがわたしの DJとしてのスタートでした。
ラジオから声が聴こえてくるのが子ども心にとても不思議で、ばらばらに分解しちゃったことがあるんです。「いつかこの箱から自分も声が出せるかな」という夢ともつかない思いが道をひらいていったのかもしれないですね。音楽にも興味があり、小学生のくせに高校生のフリしてライブに通ってました。10 代後半からはバンドに夢中に。やがて、たくさんの素敵な音楽を広く「伝える」ひとになりたいな、と思うようになっていきました。

未経験なのに「なんでもできます！」

その思いを形にするために、ラジオ番組の制作会社の門を叩きまくる日が始まりました。売り込み続けていたら、bayfmで徳永英明さんの番組制作をしているスタッフに出会い「とにかく試しに話してみて」とスタジオ入り。当時 Jリーグのオフィシャルレポーターをしていたので、無類のサッカー好きの徳永さんとサッカートークで盛り上がり、番組アシスタントDJに決定。
スポーツと音楽を「声」で伝え続ける生活がスタートしていきました。それから数年、ハードながらも充実した日々を送っていた中、結婚・妊娠。これまで通りに仕事ができなくなる不安を感じ、働き方、自分の居場所を模索し、葛藤してました。といいながら富士登山や離島への旅三昧の産休ライフも楽しんでいました。出産してすぐに仕事復帰。そんな調子で２人目・３人目も産後２週間で仕事に復帰。声のお仕事って産前産後でも、できちゃうんですよね（笑）。

できることを精一杯

いまはさすがに小学生３人の母親ですから長時間の生放送を毎日担当するのは難しいです。周囲の理解と協力を得ながら、自分ができることを精一杯やっている日々です。
子どもを見送ってから仕事をし、下校前にいったん帰宅。夜は夫とバトンタッチして収録にでかけることもあります。もちろん眠いし楽ではないですけど、「時間がない」「忙しい」をできない理由にしたくないんです。子どもの習い事や部活のお手伝い、学校での読み聞かせサークル活動や PTA 役員も務めることにしました。「そんなにやってどうするの」と周囲からは言われますけど、「必要としてくれるところには応えたい」「やりたいことはできること」と思ってやっています。
ポリープができて声が出せなかった時の絶望感を思えばぜんぜん。嫌なことや辛いことは、シャワーで汗と一緒に流してしまうんです。そして新しい気持ちで朝を迎えています。今日はこの先の人生最初の日ですから！以前、リスナーの方から、朝の番組で言った「また新しい日が始まった。新たなスタートを切ろう！」というひとことで救われたって言われたことがあるんです。ラジオって、声だけで伝えるものなので、ちょっと独特なんですよね。しっかり聴く人、なんとなく運転や勉強、家事をしながら流す人とさまざまです。でも１対１で声が届く。大それたことを伝えているわけではないけれども、「あの時の言葉が」「あの時の声が」と心に残ってもらえた時こそやりがいを感じる瞬間です。20 才のころ、自動車事故で長く入院し、ようやく退院したときに「命を救ってもらった意味を考えなさい。
命を失っていたら、道代のこれまでのチャレンジも夢も消えていたよ」と、恩師に言われたんです。これは大きな衝撃でしたけど、わたしの原動力となって、自分の思いを「たくさんの人にちゃんと広く伝えたい」という夢を持ち続けることができました。まだまだチャレンジできること、伝えたいこと、たくさんあります。毎日毎日を大切に、楽しんでいきたいですね。

さかいみちよ
bayfm DJ、JEFUNITED 市原千葉 stadium DJ をはじめ、CM の声や MC など、声の現場で活躍中の 3児の母。サッカー、音楽はもちろん、キャンプや釣り、バスケットボールなどアクティブな毎日を送る。twitter、Facebook でぜひ検索してください。

2018/7/30発行