もともと食品業界に興味があったんですか

マンガ『美味しんぼ』が大好きで、高校２年生のときにファストフード店でアルバイト。卒業後は調理師専門学校に入りました。
つくるだけでなく、もちろん食べるのも好きでした。有名フレンチ店に就職したのですが、２週間で退職。プラプラしていたら「せっかく学んだのだから食関係で働け！」と父に叱られ、求人誌の「一緒にピザを作りませんか？」というハッコー食品のキャッチフレーズを見て問合せをしたらすぐに採用試験があり最終選考。
面接では「骨を埋める気で、10 年後には社長になる！」とハッキリ答えました。４人いた面接官のなかで当時の社長だけは笑顔でした（笑）。翌日から白衣を着てバリバリ働きました。

３か月後で工場長、3年半で取締役とはすごい躍進ですね

ファストフードでの経験を活かして、忙しい時に人が少ない、手が空く時間に人が余っている、などの問題を改善するための生産管理・人員配置を社長に提言したんです。
周囲からは「生意気」と言われましたが入社から３か月で工場長に。さらに３年半後には取締役に就任しました。さすがに、やっかみを含めていろいろありましたけどやってきたことに信念がありましたし、自信もあったので、気にしないようにしていました。
その後ハッコー食品の株式を７割取得。社長と二人三脚で頑張っていたさなか社長が倒れて。わたしが多額の負債とともに新社長に就任することになりました。
当然妻には負債のことは内緒でした（笑）。さらに13 年前に取引先の「仁愛食品」を買収しこちらの社長も兼務。海外にも目を向け、技術指導なども行っていました。

営業がいないそうですが、どのように顧客を獲得しているのですか

どちらの会社も取引先の多くは飲食店で、ピザ生地はじめ調理前の手間のかかる部分をサポートしています。< br>弊社は「できるもの」を売るのではなく、顧客のかゆいところに手が届く開発型企業なので、いわゆる「営業マン」はいません。
「〇〇が欲しい」「〇〇で困っている」という相談を一緒に考えて解決するスタイル。ですので取り扱い商品は多岐にわたり、守備範囲はおのずと広がり、かならず役に立てる存在だと自負しています。

新型コロナの影響はやはり甚大でしたか

さすがに大打撃でした。過去最大の赤字を記録し、都内での売り上げは８割減。生産を止め、清掃活動を行ったこともありましたが状況が変わるのを待っていても仕方がない。こちらが変わらなくては！と考え、お客様が「来る」のを待つのではなく「届ける」ことの必要性を取引先の会社社長やオーナーにアピールしました。
調理人の手が空いている顧客には、弊社のキッチンを使ってもらい、その場でパッケージングして、各飲食店のECサイト（インターネット上で商品を販売するWebサイト）で販売するのはどうだろうかと。
このアイディアに賛同してくれた顧客の調理技術と、われわれの提供する食材とパッケージング技術がコラボレーションした結果、売り上げが戻ってくるところが増えてきたのです。

まさにピンチをチャンスに変えた起死回生のヒット！

いまはまた活気が戻り、たくさんのご相談もいただけるようになりました。
お客様の「困っていること」は「解決しなくてはならないこと」です。そして取り組みには「最終的な絵が描けるかどうか」が重要です。
当然ながら、楽していては仕事は減ってしまいます。「ものづくり」は真面目に誠心誠意こめてするもの。弊社では手作りを徹底しているので、人手も足りなくなってきています。企業は「人」です。従業員には必死に頑張ってもらいたいし、そのようにお願いもしています。また、彼らを守るのが自分の使命だとも強く思っています。
「人」を大切にできなければ何も生まれない。今後は仲間をどんどん増やしていきたい。多くの人がかかわってくれれば、それだけ道も広がります。目下の目標は、「ピザ・ワッフルで日本一！」です。輸出も視野に入れていきます。

仁愛食品（ひとめしょくひん）（株）
http://hitome.co.jp/
〒136-0074 東京都江東区東砂6-4-3
ハッコー食品（株）
http://hakko-syokuhin.co.jp/
〒264-0023 千葉県千葉市若葉区貝塚町837

2021/3/25発行